基本シミュレーション表を作成するにあたって、適切な昇給額をどうするかが悩ましいと思います。優秀な人材に対して、毎年1万円位の昇給が必要なのか、あるいは5千円位でいいのか。
この疑問の答えは
「年齢と役職に応じた年収の目安を設定する」です。
社員の給与について、「絶対的に正しい金額」というものはありません。
業界別の人件費のデータなどもありますが、それは「答え」ではなく、参考程度にするべきです。
人材不足であれば、採用が難しくなるので給与も高く設定しないといけません。仕事の人気も給与に影響します。人気のある仕事であれば、多少給与が低くても働きたいと考える人はいる一方で
人気のない職種の場合は、ある程度給与を高くしないと採用に結びつきません。昨今の例では、屋外での作業はあまり人気がない一方で、IT関係やクリエイティブな仕事、自分の裁量でいろいろできる仕事などは人気があります。
このような要素を考慮して他社に負けない給与相場を把握することが重要です。上記の基本シミュレーションのサンプルも、ある職種では「いい感じ」の給与だとしても、別の業界では「低すぎる」ということになる可能性があるのです。
ここで難しいのは、中小企業の多くは人件費に余裕があまりないということです。
理想はこれくらい支給したいが、ウチの業績ではちょっと厳しい、という思いは多くの中小企業の経営者がされたはずです。
このようなことを総合的に考えながら、適切な給与水準や昇給額を検討するために、
最初に年齢と役職に応じた年収の目安について検討します。
「世の中(あるいは同業他社)のことを考えると、〇歳では月給〇円位は必要だよね。そして、優秀な人は〇歳位で課長になってその時の月給は〇円位支給しないと社員は納得しない(転職してしまう)よね・・・」と言った具合に新入社員から定年までの優秀な人のキャリアパスと必要な給与額を考えます。
例えば、自社のビジネスモデルや同業他社(世間相場)を考慮した結果、次のようになったとします。
- 22歳、新入社員→ 月給22万円、年収308万円位
- 32歳、係長のイメージ→ 月給34万円、年収476万円位
- 42歳、課長のイメージ→ 月給45万円、年収630万円位
- 52歳、部長のイメージ→ 月給58万円、年収812万円位
※賞与を月給の1か月分を2回(夏、冬)支給すると仮定します。
年齢、役職と月給(年収)に対する大きな方針が決まれば、毎年どの位昇給しないといけないかが見えてきます。
例えば上記の場合、22歳で月給が22万円です。そして、10年後の32歳では月給34万円になるのであれば、単純計算で毎年12000円の昇給が必要です。この12000円の昇給はすべて基本給ではなく、役職手当や等級手当として支給することもできます。つまり、毎年コンスタントに同額の昇給ではなくても良いのですが、結果として32歳で34万円になるように推移させる必要があるということです。
基本給、役職手当、等級手当の考え方については後述してありますので、自社に合ったバランスで昇給・昇格の方針を設定してください。
優秀な人材からそうでない人まで、すべてのパターンのシミュレーションを作成するのは大変なので、まずは優秀な人材のシミュレーションを作成します。優秀な人材を基準として、他の社員はそれ以下の推移になると理解して、後は必要に応じてキャリアパスに応じたシミュレーションを検討するとよいでしょう。