多くの企業で当たり前のように役職を設定していますが、役職が必要な理由として次のことあげられます。
- 能力や経験の違いを役職として区別する。
- 役職の昇格は給与アップにつながるので、キャリアパスがイメージしやすくなる。
- 役職ごとに必要な仕事や責任を与えて、効率よく組織をマネジメントする。
- 対外的にも役職を設定すると便利になることが多い(役職によって信頼度が上がることがある)。
役職は大きく分けると、上位者が新人や後輩の指導をしたり、評価をしたりする
「実績や経験が豊富な社員が後輩社員を管理する、成長させる」という意味と
「肩書によって立場を明確にする」という2つの要素があります。
後輩社員を管理したり成長させたりすることは、とても価値のあることです。役職手当はこの業務の対価であると言えます。
一般的な役職として、主任、係長、課長、部長といった呼称がありますが、給与や仕事の内容のほかに、「肩書」は
本人のステータスを分かりやすく表現しています。
例えば、営業の仕事で肩書がない名刺よりも例えば「課長」や「マネージャー」と書いてあった方が相手の信頼はアップします。多くの銀行において、給与制度上は平社員でも名刺には「支店長補佐」などと記載されていることは珍しくありません。
仕事以外でも、例えば同窓会などで「もう課長になったんだ。すごいねー」という会話は、給与や仕事の内容を知らなくても交わされることが多いと思います。
一方、役職を設定するデメリットは何かあるでしょうか。
それは、役職のルールをしっかり決めていないと、役職体系が崩壊してしまうおそれがあることです。
一般社員から始まって、主任、係長、課長、部長と4つの役職の場合は、そんなに複雑なことはありませんが、たとえば、主任、係長、課長代理、課長補佐、課長、統括課長、部長代理、部長補佐、部長、統括部長など役職がたくさんあると、それぞれの役職の意味を合理的にとらえるのが難しくなります。
例えば、〇さんはまだ課長にするのは早いので課長代理にしよう。△さんは、これまで課長だったけど嘱託社員になるタイミングで課長補佐にしよう・・・など、その時々では意味があっても、いろいろなケースや例外を次々に認めていると、それぞれの役職の意味が分からなくなってしまうことがあります。
その場しのぎのために役職を増やしてしまうと便利な役職もデメリットになってしまうので注意が必要です。
役職を整備するときに合わせて考えたいのが
「組織図」です。
例えば、下記が社員24人の広告企画会社の組織図だとします。
営業部長と経理課長は、(兼務)となっていますが、どの部や課も組織の形(役職)をしっかり整備して、管
理職に該当者がいない場合は、上位者による「兼務」と明記することが重要です。
このようにしっかりとした組織図を作り、社員に公開することによって、
会社全体の発展のイメージを共有することができます。
上記の例の場合、営業部長は社長(Aさん)が兼務となっていますが、課長のGさんまたはHさんが次期部長候補であることが予想できます。
このように役職を設定して、さらに組織図をしっかり整備することは、会社の近い将来のビジョンの共有と社員の成長の原動力となるのです。
必要な役職を設定した後は、「役職手当」について考えます。
シンプルな例として、次のような役職手当表をもとに説明します。
最初に考えることは、役職ごとの価値の違いです。
たとえば、主任と係長までは普通に頑張っていたらなれるが、課長は優秀な人材しかなれない役職である場合は、上記の例のように主任(1万円)、係長(2万円)、課長(5万円)というように主任、係長までは1万円の昇給ですが、課長になると3万円昇給するというように差をつけます。
この具体的な金額については、前述した
給与・人事評価制度のストーリーをもとに優秀な社員のキャリアパスを検討して
「基本シミュレーション表」でいくつか役職手当の金額を入れながら調整します。
上記の例の場合、部長になると一気に10万円アップしますが、これは、
部長は管理監督者となり、時間外手当が支給されない分、役職手当に組み入れているという例です。部長になって残業代がなくなり、給与が減ってしまうということないようにするための処置です。部長になる前の時間外手当の平均が月額6万円で、課長から部長への昇格による昇給が4万円というイメージです。
また、係長、課長、部長の役職手当が「〇〇円~」となっているのにも意味があります。
これは同じ課長職でも部下の人数やマネジメントの難しさ、課長職としての
成熟レベルなどの違いを表現するためです。課長になったら最低でも5万円の役職手当が支給されますが、部下が多い場合やベテラン課長は役職手当が6万円になることもあるということです。
このように給与体系を作るうえでは、さまざまなケースを想定して
融通が利く制度にすることが重要です。
最後に、給与体系の役職と名刺に記載する役職が異なる場合についてです。
前述のように、営業活動などの際、名刺に役職がなにも無いよりも例えば「課長」や「マネージャー」というように記載されていたほうが相手の心証がよくなる場合があります。
このようなケースでは、
名刺に記載用の役職と実際の給与や組織での役職を変えることが有効です。
たとえば、給与と実際の組織の役職は、一般社員、主任、係長、課長、部長だとしても、名刺には、リーダー、マネージャー、ゼネラルマネージャーなどと記載します。
この時のポイントは、
混乱しないように和呼称と英呼称のようにハッキリ分けるということです。